長年、特殊清掃や遺品整理の現場に携わってきた専門家の視点から見ると、部屋の汚さのレベルは単なる見た目の問題ではなく、そこに住む人の心身の健康リスクと直結しています。清掃業界では、現場の状況をいくつかのレベルに分類して見積もりや作業計画を立てますが、その区分ごとに発生する健康被害は異なります。まずレベル一や二の比較的軽い散らかりであっても、埃の蓄積によるハウスダストアレルギーや喘息のリスクは無視できません。目に見えないダニの死骸や糞が空気中に舞い、睡眠の質を低下させる要因となります。レベル三を超え、生ゴミや飲み残しのペットボトルが放置されるようになると、リスクは飛躍的に高まります。カビの胞子が壁や家具に充満し、それを吸い込むことで夏型過敏性肺臓炎などの深刻な呼吸器疾患を引き起こす可能性が出てきます。また、害虫の発生は単なる不快感にとどまらず、サルモネラ菌などの感染症を媒介する危険性も孕んでいます。さらにレベル四や五といった重度の汚部屋になると、物理的な危険も加わります。山積みのゴミから発生するアンモニア臭や腐敗臭は嗅覚を麻痺させ、住人の衛生観念をさらに低下させるセルフネグレクトの状態を深刻化させます。また、ゴミの重みによって床が抜けたり、害虫が配線をかじって火災が発生したりといった、命に関わる事故のリスクが常に隣り合わせとなります。このように部屋のレベルが悪化すればするほど、そこから抜け出すための気力は奪われ、肉体的なダメージも蓄積していくという負のスパイラルが形成されます。専門家が最も危惧するのは、住人が自分の部屋のレベルを過小評価し、「まだ大丈夫」と思い込んでいる間に病魔が忍び寄ることです。部屋の状態は居住者の鏡であり、清潔な環境を維持することは、自分自身の生命を守ることと同義であることを忘れてはなりません。早めの相談と清掃の介入が、健康寿命を延ばすための最も効果的な手段となるのです。生ゴミを長期間放置したことによる床の変色や腐敗、キッチンの油汚れを放置して換気扇が固着してしまった場合などは、クリーニング代の枠を超えて、設備の交換費用までもが借主の負担となります。特に深刻なのが壁紙への影響です。ゴミから発生した湿気やカビが壁紙の裏側まで浸透していたり、タバコのヤニやペットの排泄物の臭いが染み付いていたりする場合、部屋全体の壁紙を張り替える必要があり、その費用は数十万円に及ぶことも珍しくありません。